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犬連れの市民権

以前、仕事上の関係者から相談を持ち掛けられたことがあった。麻布十番のビル一棟の使い道である。丁度、バブルがはじけた頃だったが、それでもまだ資産を有する方々は、自らの資産を有効に活用させようともがいていた頃である。当時はまだ我が家にはべりーはおらず、犬連れの人を見るたび、ウチにも犬が欲しいなあと思っていた。そういう背景もあり、「犬」をキーワードとした商業施設が面白いんじゃないか、と提案した。ペットショップという概念ではなく、犬と人間が同列に扱われるという空間。つまりは普通の商業施設だが、どのフロアもどのショップもレストランも犬と一緒に入れて気兼ねなど一切しない、そんな空間。衛生上や防災上の対策も、人間のみならず犬も含めて考える。そんな、空間。

結果はバブルが本格的に終わり、そんな話があったのか、といった結末になった。さて、冒頭にこのエピソードを記したのは、犬を連れて街を歩くことの制約を考えてみたいと思ったからである。

ベリーが成犬になった頃は、出来るだけ街に連れ出した。ベリーもそうだが、私自身どういう経験が出来るかの実験でもあった。休日の、それも昼下がりの渋谷や原宿、銀座といった繁華街で犬を連れていると、まず奇異な目で見られる。いや、物珍しがられるといった方が的を得ているか。やはり、場に相応しくないということであろうか。しかし、偶に犬連れの方と出くわすと実に颯爽と歩いている。犬も堂々としている。考えてみれば、地元の人であればいつもと同じ道を歩いているだけに過ぎず、それが偶々繁華街であるだけのことだけである。繁華街に限らず普段犬を連れていかない場所で犬を連れて歩く時に感じる違和感は、つまりは、自分という内なるものに自ら課している制約だったのかと気付くわけである。そうと分ればもう怖いものはない。その後、更なる積極性が加わったことは、言うまでもない。

しかし、これが建物内となると話は違ってくる。なんせ日本は、盲導犬ですら入れない病院があるぐらいだから。それでも臆せずトライしてみる。郵便局はお咎めなし。銀行でも何店かはオーケーだった。ただ、回りの奇異な目はあったが。そんな時、建物内でも犬を連れて歩くことを許されているデパートのことを知った。玉川高島屋である。食品、レストランフロアを除けば全てオーケーなのだが、浮いた存在となることに変わりはない。ご丁寧に注意する方もいる。やはりその空間にいる人全てが、当たり前のことと捉えてもらえないと難しい。別に無理してそういったところに犬を連れていかなくてもいいのだが、こうした行動を通じて犬連れの市民権を得られることが出来れば嬉しいと思っているだけなのだ。

さて、問題は飲食店である。食品衛生法やら保健所法などで縛られている空間だけに、これは一筋縄ではいかない。食品販売をする店の中はこれはどうしようもない。コンビニにペットを連れて入れないのはこうした理由である。それでも、厨房とフロアが隔離されているところならば、店のオーナーのポリシーいかんで犬連れに道が開かれている。業界では”ナカ”と”オモテ”という言い方をするそうだが、例えばオープンテラスなどの”オモテ”であれば、問題がないところがある。代官山のヒルサイドテラスなどはその典型だ。ここでは犬のために食器に水まで用意してくれる。初めてそこでお茶した時は言い知れぬ感動を味わったものである。”ナカ”でもオーケーの店がある。自由が丘のポーズカフェもその一つ。ここは駒沢公園で黒ラブを連れていた方がオーナーのお店で、その時に知った。面白いものでそういった店にベリーを連れて行くとおとなしく佇んでいるものである。臆することなどない。

以前、白金に古家を改造したペットショップがあったが、ここのガーデンテラスは当然ながら犬を連れて入れるところで、客は全て犬連れであった。でも、なんとなく落ち着かない。まるで公園でお茶しているようで感動がないのである。要は普通じゃないのである。もっと自然でさり気なく日常の空間で、普通の店で、それでいて犬がいても違和感がない、そんな場所こそが望ましい。贅沢かもしれないがそういう店が多く出来ることを望む。

1999-01-23


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