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ベリー・ザ・ドッグ・サイト…コラム「犬と社会」


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アニマル・ディバイド

IT先進国米国では、ITが社会インフラ化していく過程で、デジタル・ディバイドが問題視されるようになった。ディバイド(divide)とは、「分割する」との意味で、この場合は、デジタルな技術ないし情報に対応できる層と出来ない層に分かれてしまうといった二極化を指す。ある種の階級分裂をもたらしかねないという点で、社会問題化しているわけだ。この例を持ち出すまでもなく、社会には様々な"ディバイド"される要素がある。もちろん、ニ極化自体は、対応能力で生じるものばかりではなく、思想信条など多くの場面でみることが出来る。対極に位置することで、人間の振る舞いや意識に影響を及ぼすから、二極化要因の研究が為され、問題点を除去する努力が続けられてきたわけである。

犬を飼っているので殊更そう思うのかもしれないが、人間社会と共存するペット動物、なかでも人間社会にとけ込んでいる飼い犬や飼い猫の見方に対して、"ディバイド"なるものを感じてしまう。ここでは敢えてアニマル・ディバイドと呼ぶことにするが、ペットの存在を認識し、積極的に受け入れるか、それとも忌避するかは、人と動物の共生社会実現への踏絵となる。共生社会というキーワードは耳に心地よいが、意識という障壁によってその実現が阻害されている象徴的なものが、実はアニマル・ディバイドなのである。

とりわけ、飼い犬や飼い猫が人間社会の行動領域にどこまで入りこんでいいのか、という意識間格差が大きい。自分の行動範囲に人間以外の動物が入り込むことによって、普段は深層に押し留めておいた意識が表層へと覚醒されるからだ。こうした格差が生じる理由は、単なる動物が好きか嫌いかといった情緒的理由から、社会及び住環境、社会制度上の不備、さらには教育の問題にまで広げることが出来る。飼い主のモラルの欠如といった視点も忘れてはいけないだろう。

アニマル・ディバイドを消滅させることが出来る社会、これこそが理想である。飼い主として出来ること、それは突き詰めていけば動物を愛護することに尽きる。人間社会と共生させるための基本的なしつけを施すことはもちろん、犬や猫が幸せに暮らせる環境の提供は言わずもがなである。人間として出来ること、それは次代を担う子供達に生命の尊厳を教えることであり、悪戯な恐怖感を与えないことである。こうした基本的なことが出来ていないから、動物嫌いや小動物を平気で殺傷したりする子供達が出てくるのである。何も子供達ばかりではない。犬や猫を商品としてしか見ない悪徳業者は、価値の無くなったものの飼育を簡単に放棄する。ペットにまつわる不幸な事件もここ数年マスコミで次々に取り上げられた。社会全体で取り組む問題としての認識を踏まえ、国として出来ること、つまり、動物管理法を改正したのは、一歩前進である。

昭和48年に施行されたこの法律は、平成11年、法令名も「動物の愛護及び管理に関する法律(通称動物愛護法)」と変わり改正された。主な改正内容は、動物の飼育と保管に関する分野が章に格上げされて扱いが増えたこと、動物取扱業を届け出制としたこと、罰則を強化したことである。全体的に愛護的精神が重要であるとの立場に立ち、同時に飼う側の責任を明確にしたという点で評価できる。

特に注目すべき条文は第ニ条及び第三条である。要約すると、「動物虐待の禁止、ならびに、人と動物の共生に配慮しつつ適性に取扱うこと(二条)」「国及び地方公共団体は、動物の愛護と飼養に関し、ニ条の趣旨に則り、相互に連携し、教育活動、広報活動等を通じて普及啓発を図るよう努めること(三条)」とあり、人と動物の共生の重要性を論じ、動物への愛護を国や地方行政がバックアップするよう謳っている。人と動物の共生に溝を作ってきた行政だが、本法令改正を期にその溝を埋めてもらうよう期待したい。

もう一点。法令本文ではないが、この法律案の提出に伴う決議(付帯決議)によれば、本法の施行に当たり、政府が次の事項について適切な処置を講ずるべきとある。その第三項には、「飼い主責任の意識の高まりを踏まえつつ、公園等公共施設の利用のあり方についても検討を行うこと。」とある。公園等のパブリックスペースに犬の入園禁止処置を採ってきた行政に対し、共生という概念を遂行させていくためにも、政府側のリーダーシップが待たれるところである。

"ディバイド"なるものは無くしていくよう努力するのが人間社会の知恵である。上記法律の改正に伴い、ペットを取巻く環境は徐々にではあるが好転していくことだろう。後は我々人間一人一人の意識の変革のみである。

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